ベストセラー小説「孤舟」はちょっと残念


ハッピーエンディングの参考書かと期待しましたが・・・

定年退職した元大企業役員が、妻との生活の中で邪険にされ、しまいには妻と娘に見放されて一人暮らしを強いられる話し。身につまされる人も多いせいか、50代・60代の男性を中心にベストセラーになっている作品。

毎日家にいる夫に嫌気をさして妻と娘が家を出て出て行き、一人の生活に陥ったところまでのストーリーはすごくよかったと思う。いまどき妻に「水」のひと言で水を持ってこさせる夫がいるのかと思いつつも、そういう時代の人だからこそ妻に愛想をつかされてしまうのでしょう。役員まで登り詰めながらも、仕事一筋でやって来て仕事以外に特別な愉しみを持たない男の悲哀を感じさせました。

家の中での横柄さや身勝手さの描写はすごくよかったと思うし、「どうしてこんなに女性の心がわかるの?」という女性読者の感想がなるほどと思える内容でした。

妻と娘が出て行った後、家にいても特段にすることはなく、かといって昔の仲間に連絡をするのは暇をもてあましていることを知らせるようで嫌だというプライドが邪魔をしてそれもできない。やむなくデートクラブに向かうあたりは安直だなとは思ったものの、デートクラブの女性と食事に行くのに大枚をはたいてしまったり、妻が突然帰ってしまうかもしれない家に呼び寄せたり、この先どうなってしまうんだろうと期待させた。

これもある種の渡辺淳一ワールド

デートクラブの女性と一線を超えたいといろいろ画策しながら、最後まで機会を得られないところは、やはり孤独の演出かと思っていたのに、結局妻は娘とケンカして自宅に帰り、もとのサヤに収まってしまう。デートクラブの女性は結婚を機にやめてしまうが、「他の横柄なおじさんたちとは違う」と褒められ、すごく満足してしまう。

仕事一筋で家庭を顧みなかった男でも、自分のお金を自由に使うチャンスをつかみ、若い女性とももたまには会えることになり、なんだか男に都合の良い話になっているのではないか?

結局、男の視点で書かれたいつもの渡辺淳一ワールドではないか、と思わされた一冊でした。
企業戦士(死語ですね)にもっと危機感を煽ってくれるかと思ったのですがね。


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